2023年5月28日の読売新聞に、「どっち派」として、神の謙虚さと人間を書いた三浦綾子さんと、人間の弱さを許す温かさを表した遠藤周作さんが取り上げられていました。沢山の読者からのお二人の作品についての声を掲載していましたが、お二人は日本を代表するクリスチャン作家だと思います。
映画『沈黙-サイレンス―』以来、長崎、外梅、五島のクリスチャンツアーは行ってきましたが、三浦綾子さんのゆかりの地を訪問するツアーは初めてです。
昨年、映画『塩狩峠』『海嶺』をHDリマスター化したときに、「三浦綾子文学記念館」の皆様にも協力をいただいたこともあって、ツアーを企画して皆様をお連れしたいということになりました。
旭川にとってのベストシーズンは、6月。どうせ行くならこの時期にと6月15日からの2泊3日を選んだのですが、これが大成功でした。
三浦ご夫妻が創作に行き詰まると訪問されたという「パッチワークの路」の景色には癒やされました。この美瑛の丘は、異なる作物の様々な色の畑が、まるでパッチワークのように連なっています。天候も守られたので、この時期を選んで本当に良かったと思いました。
さて、まずは「三浦綾子記念文学館」、ここに来れば三浦綾子さんの全てが分かります。ちょうど、「同時代を生きた作家―遠藤周作と三浦綾子」のコラボ企画展をしていました。
ここでスペシャルプログラムをご用意、今回のツアーリーダーをしてくれた、教会音楽家として活動している久米小百合さんのミニコンサートを行いました。三浦綾子さんの愛唱讃美歌136番「血しおしたたる」をアカペラで、讃美歌138番「ああ主は誰がため」と映画『塩狩峠』で歌われた「主よ み手もて」をピアノ弾き語りで歌ってくれました。
三浦綾子さんの世界を、音楽でも体感できるなんてなんという贅沢でしょうか。
その後、小説『氷点』に書かれた外国樹種見本林内を散策。また、三浦文学誕生の家、三浦ご夫妻の雑貨屋があった現「旭川めぐみ教会」、亡くなるまで住んでおられた「三浦綾子邸」を訪問のあと、宿泊は、これまた小説『氷点』にも出て来る層雲峡です。
2日目はまず、バスガイドさんも驚くほど水量のある「銀河、流星の滝」を見て、大自然を創られた主を崇めました。
どうしても皆様をお連れしたかったのは、映画『塩狩峠』の舞台です。『塩狩峠、愛と死』の著者の中島啓幸さんが来て下さり、遺族からお預かりしている小説のモデルになった長野政雄さんの聖書を見せてくださいました。
長野政雄さんはいつも聖書を持っており、もちろんこの事故の時も携帯していました。ですので、彼の血の跡があります。長野政雄さんの犠牲が、多くの人々の命を救った証拠です。
彼の死は乗客を救ったばかりではなく、その後三浦綾子さんが小説を書き、映画化され、多くの人々をキリストに導きました。私も20代から今まで、この映画を上映する仕事をして来ていますので、人生に影響を受けた一人です。
ここでしばらく、チャプレンとガイドをしてくださった込堂一博先生に導いていただき祈りの時を持ちました。
続いて訪問したのは、小説『泥流地帯』の世界です。『泥流地帯』文学碑、「開拓記念館」、「十勝岳爆発記念碑」を訪れました。
いまだ噴煙を上げている十勝岳を見ながら、三浦綾子さんが小説を通して「なぜ正しい者が大災害という苦難に遭わねばならないのか?」と誰もが抱く問いにどう答えたのか、もう一度小説を読みたくなりました。
この小説『泥流地帯』を映画化しようとするプロジェクトがありましたが、スケールの大きな内容のため、2度ほど頓挫したようです。ちょうど2009年の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の滝田洋二郎監督が、今度企画に加わることになったとの報道がありました。十勝岳噴火による大正泥流の発生から100年となる2026年の公開を目指すそうです。
美瑛の「青い池」を見学後、夜にはホテルOMO7にて、久米小百合さんのミニコンサートを行いました。ゴスペル、讃美歌、「上を向いて歩こう」などを歌ってくださり、一同大満足の一日でした。
最終日はまず、三浦ご夫妻が通っておられた「旭川六条教会」を訪問。教会員で三浦綾子読書会の方から、晩年のお二人の教会生活についてお聞きしました。どんなにお身体(からだ)が悪くても最後まで神様を第一にされた姿をお聞きし、見倣わなくていけないと思いました。
その後、『道ありき』文学碑のある春光台を訪問した後に、「旭山動物園」、「上野フォーム」を楽しんで、旭川空港へ向かいました。
三浦綾子さんが大好きだった旭川を満喫しました。三浦綾子さんご夫妻の信仰、そして長野政雄さんの愛と犠牲を深く知った充実した3日間でした。
人が自分の友のためにいのちを捨てること、これよりも大きな愛はだれも持っていません。 (ヨハネ15:13)
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