あの大ヒット作「祈りのちから」のケンドリック兄弟が、昨年製作を開始してこの度完成したした最新作、「The Forge」(ザ・フォージ(原題)上映時間2時間4分)が、この8月23日、全米で公開されました。
ケンドリック兄弟の9作目であり、子会社であるケンドリック・ブラザーズ・プロダクションズによる6作目の作品となりますが、正確には、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント傘下でキリスト教映画を専門とするアファーム・フィルムズとの共同製作で、配給はソニー・ピクチャーズです。
ケンドリックは3人兄弟。長男シャノン、次男アレックス、3男スティーヴンで、ケンドリック作品は、3男スティーヴンが主に製作(プロデューサー)・脚本、次男アレックスが監督(時には共同製作、脚本、主演も)、長男シャノンは、ケンドリック・ブラザーズ・プロダクションズの経営を担当しています。この「The Forge」もそうで、今回の脚本は、スティーヴンとアレックスの共同執筆です。
「The Forge」は、オープニング第1週の週末3日間で、早くも製作費の500万ドルを上回る興収(興行収入)600万ドルを記録、全米第5位で好調のスタートを切りました。この作品の内容情報をお話しする前に、大ヒットした「祈りのちから」を始め、ケンドリック兄弟の、これまでの5作品について、ざっと振り返ってみたいと思います。というのも、彼らの過去の作品の、福音のメッセージがしっかりと込められた内容のすばらしさをもう一度思い起こすと共に、この実績に基づいて、神様が、この新作「The Forge」も、ソニー・ピクチャーズさんによって必ず日本公開の道を開いてくださるとの信仰を持って、共に祈っていきたいからです。
ケンドリック兄弟は、れっきとしたキリスト教会の牧師ですが、人間社会の様々な差し迫った問題にも鋭い目を向け、それを自ら映画を製作・配給することによって、解決への糸口を広く世界に問うという使命を与えられました。そして米ジョージア州オールバニーで、地元の教会の働きとして独立プロダクション「シャーウッド・ピクチャーズ」を設立したのが、彼らの映画製作の始まりです。
第1作「フェイシング・ザ・ジャイアント」(原題Facing the Giants、2006年)、第2作「ファイアー・ストーム」(Fireproof 2008年)、第3作「ファーザーズ」(Courageous 2011年)、第4作「祈りのちから」(War Room 2015年 日本劇場初公開)、第5作「赦しのちから」(Overcomer 2019年 続いてこちらも劇場公開)、そして今回の第6作「The Forge」に続きます。
では、上記5作の中で、ダントツのヒット作となった「祈りのちから」のお話です。この映画は、300万ドル(約4億円)の予算で製作され、全米1,500館余りの公開でしたが、その後わずか2週間で2,790万ドル(約38億円)を稼ぎ出し、最終的には全世界で7,400万ドル(約100億円)の興収を記録しました。ケンドリック兄弟は、終始一貫、キリスト教の教える信頼・誠実・愛などの人間の“善意”をテーマに映画を作り続け、その5作目の「祈りのちから」で、日本では晴れて劇場デビューを果たしたのでした。5本の作品は、それぞれ内容は異なりますが、その根底には共通のテーマがあります。それは、人生の困難に直面したときの、文字どおり“祈りのちから”のすばらしさです。この第5作は、そのテーマを初めて表面切って掲げた作品だったと言えるでしょう。
そしていよいよ「The Forge」の、まずは全米公開です。この映画は、「祈りのちから」のスピンオフ(派生続編)作品です。前作で主人公トニーの妻エリザベスを演じたプリシラ・シャイラーは、この映画ではその双子の妹であるシンシア・ライトを演じ、あの祈りのおばあさん、ミス・クララも登場します。簡単なストーリーは、そのシンシアの息子で、高校を卒業したものの何もせずにゲームばかりしている19歳のアイゼイア(聖書のイザヤ!)が、 母シンシアからきつく言われてしぶしぶプレス工場の倉庫で働き始めますが、 自分が進むべき道を見つけられずにいら立ちながらも、やがて人生の使命を模索し始める…というものです。
原題の「The Forge」ザ・フォージは、普通はそのプレス工場のことですが、「祈りのちから」の原題War Room(作戦指令室)が、実は祈りによって神の作戦指示を聞く“祈祷室”であったのと同じように、このThe Forgeも、主人公を雇ってくれたプレス工場の社長が、キリストの弟子としてのクリスチャンの信仰訓練を定期的に行っている‟弟子訓練室”のことです。そこにはプレス工場からは社長と主人公の若者アイゼイア、他にも色々な場所から神様に呼ばれた“キリストの弟子たち”が集まっていて、そこで皆で励まし合い、祈り合い、出ていって福音を伝え、人に仕える者と変えられていきますが、その基地となる場所がForgeです。そこには、主人公はじめこれらのキリストの弟子たちが、試行錯誤しながら、人生を一歩一歩“前進”(The Forgeのもう1つの意味)していく姿を掛けているのかもしれません。
スピンオフ作品というのは、ぶっちゃけ本流から分かれ出た支流映画です。「ハリー・ポッター」シリーズとか、「インディ・ジョーンズ」シリーズのような本流の続編ではありません。けれど、上述のように、今回は前作「祈りのちから」で祈りの戦士に変えられたエリザベスの双子の妹シンシアが登場し、祈りのおばさんのクララも出てくるとなると、内容としての本流とも言うべき“祈りの力”は、随所にしっかり流れており、それが主人公の少年の進路に大きな力をもたらすであろうことは“未見の真実”でしょう!
もう一つ、この作品の大きな魅力は、前作「祈りのちから」をはじめ過去のほとんどのケンドリック作品の主役が、熟年の大人であったのに対して、主人公が若者であることです。大人と同様、若い人たちも、情報氾濫の時代にあって、多くの誤った教えに惑わされながら、何が人生の本当の目的なのかが分からず悩んでいます。そして希望の見えない明日に悲観して、自ら命を絶つ人たちも多いのです。そんな中で、ケンドリック兄弟は、目を“次世代”に向けて、彼らにキリストに在る真の生きる力をはっきりと指し示しているのです。
最後に、監督アレックス・ケンドリックについてもう1つ。彼は、上記6本の監督作品以外に、俳優として、2022年全米公開(日本は劇場未公開)のカーク・キャメロン主演「Lifemark」に、出演しています。 これは当初、アレックス兄弟が作る予定だったのですが、諸々の事情でアレックスの出演にとどまったものです。中絶と養子縁組をテーマにした作品で、全米規模で中絶を合法化した1973年のロー対ウェイド裁判の判決を連邦最高裁が覆す決定をしてから、わずか数か月後の公開です。
改めて思うのですが、「神の子は売り物ではない」と“小さな命の尊厳”を訴えるべく、今月末に公開される「サウンド・オブ・フリーダム」に主演を買って出たジム・カヴィーゼルと言い、「せめて出演者の一人としてでも」と、“生まれざる命の尊厳”がテーマの「Lifemark」に関わったアレックスと言い、良心的な映画は、良心的なクリスチャンたちの関わりによって世に生み出されます。だとすれば、祈りによってそれらの作品の日本公開を可能にし、自らも真っ先に鑑賞して人に勧め、次のキリスト教映画の公開への道を開くことは、私たち良心的クリスチャンの大切なミッションではないでしょうか?
ぜひ「The Forge」の日本公開のために、期待をもって祈り、公開の暁には、できる限りの応援をしましょう!
最後に、「祈りのちから」とこの映画の日本語字幕入り予告編のURLを掲げておきます。
「どのようにして若い人は自分の道をきよく保てるでしょうか。あなたのことばに従ってそれを守ることです。」(詩篇119:9)
●「祈りのちから」
●「The Forge」(小川私訳。YouTube クリスチャン映画information会員 限定公開)
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