キリスト教に関する映画は、海外では毎年公開されますが、なかなか日本では興行成績が振るわないので、難しいのが現実です。
ところが時々配給会社が、キリスト教色が強い映画でも、内容重視でリスクを承知で購入してくれることがあります。それは、神の導きとしか言いようがありません。
今回の「名もなき生涯」もまさしくそうで、20世紀フォックス映画が購入してくれた良質な作品です。
物語は、第二次世界大戦時、ヒトラーへの忠誠を拒絶し、ナチスに加担するより自らの信仰に殉じたオーストリア農夫とその妻の実話の物語です。映画のシーンは、あの「サウンド・オブ・ミュージック」の世界、山と谷に囲まれた美しい村で始まります。妻のフランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、戦火が激化し戦争に駆り出されますが、ヒトラーへの忠誠を頑なに拒み、直ちに収監されてしまいます。妻のフランチスカは手紙で励ますのですが、彼女自身も村で裏切り者の妻としてひどい仕打ちを受け始めます──。
死刑判決の直前、妻のフランチスカに、フランツが妥協するように説得させようとします。二人がキリスト者として出した結論とはどうだったでしょうか。あなたなら最期まで己の信念を貫き通すことが出来るでしょうか。
2019 年10月に、映画「沈黙-サイレンス」ゆかりの地である長崎、五島列島を訪ねるツアーを行いました。豊臣秀吉、徳川幕府のキリシタン迫害、そして原爆の悲劇を観て、「なぜ神は沈黙されているのか」「わたしたちはキリストに覚悟を持って従っているか」が問われました。
フランツ夫妻のことは決して他人事ではありません。なぜなら彼らが苦しんでいた頃、日本でも治安維持法によって教会は迫害を受けていたからです。残念ながら、日本のある教会は、この映画で描かれているドイツの教会のように、国家に妥協してしまいました。
なぜ今、76歳を迎えた巨匠テレンス・マリックが作家生命をかけて人々に問う作品を作ったのでしょうか。
約3時間の映画の中で描かれる、神の存在を感じるオーストリアの美しい光と風景、それとは対称的な人間の罪。最後の夫婦の面談で、フランチスカがフランツに心から語りかけます。「私はいつもあなたと共にいます」それはあたかもイエス・キリストがフランツを励ましているように聞こえました。
「見よ。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたとともにいます。」
(マタイの福音書28:20)
Yorumlar